静岡で青木設計事務所を開設して30年、親子で始めて10年を迎えるにあたり、これまで私たちはどんなことを考えて建物をつくってきたのか、改めて考えました。そして同時に、皆様の感想を聞くことができればと展示会を開くことにしました。私たちの設計は、ただただ建主と向き合い、夢や希望をふまえ、意見交換しながら計画を煮詰めていくごく一般的な手法です。個々に住まいに対する考え方や趣向が違うことを受け入れ、生活を豊かにする独自の彩りを持つ建物を、建主と一緒に形にしてくことが私たちが目指してきた設計です。この展示会の題目である「色彩の建築」とは、そこに住む家族らしい居場所、居心地をしつらえる建築のことです。たとえばそれは日向ぼっこをしたくなる木材の香りがする中庭友人たちとホームパーティーができるほどの大きなタイルの土間近くの山の借景を楽しみながらワイングラスを傾けることができる造り付けのカウンターテーブルスキップフロアのリズムに合わせて次々に部屋の色が変わるワンルーム一人でこもるための秘密基地・・・それら全て「空間を彩ることは、生活を彩る」と考えて造ってきました。会場に展示されている個々の住まいの色彩（いろどり）を見ながら、私たちやご来場の方々と気兼ねなく会話を楽しんでいただける時間になることを願って開催しました。